チームのアイデアを引き出す デジタルブレストツール活用術
日々の業務に追われる中で、新しいアイデアを生み出すことや、チーム全体の創造性を高めることに課題を感じている方も多いのではないでしょうか。特に、リモートワークやハイブリッドワークが一般的になった現在、物理的な会議室でのブレインストーミングは難しくなりつつあります。
しかし、デスクから一歩も動かずに、場所や時間にとらわれずにチームで活発なアイデア出しを行う方法があります。それが、デジタルツールを活用したブレインストーミング(以下、デジタルブレスト)です。
従来のブレストの課題とデジタルブレストの可能性
従来の対面式ブレインストーミングには、いくつかの課題がありました。
- 場所と時間の制約: 参加者全員が同じ場所・時間に集まる必要があります。
- 発言の偏り: 声の大きい人や積極的な人の意見が中心になりがちで、全員が平等に参加しにくい場合があります。
- 記録と整理の手間: 付箋の貼り付けや議事録作成に時間と労力がかかります。
- アイデアの構造化の難しさ: 出されたアイデアをその場で構造化し、関係性を見出す作業が難しい場合があります。
デジタルブレストは、これらの課題を解決し、チームの発想力を最大限に引き出す可能性を秘めています。
デジタルブレストのメリット
デジタルツールを使うことで、ブレインストーミングはより効率的かつ効果的になります。
- 参加のハードル低下: オンラインで実施できるため、場所や時間(非同期参加も可能)の制約が軽減されます。各自が自分のペースでアイデアを入力できるため、発言が苦手な人でも参加しやすくなります。
- アイデアの平等性: すべてのアイデアがデジタル化されるため、誰の意見であっても同じ「情報」として扱われます。これにより、アイデアそのものに焦点が当たりやすくなります。
- 効率的な記録と共有: 入力されたアイデアは自動的に保存・記録されます。議事録作成の手間が大幅に削減され、参加者への共有も容易です。
- 柔軟なアイデア整理: デジタルホワイトボードツールなどを使えば、アイデアをドラッグ&ドロップで移動させたり、グループ化したり、色分けしたりと、直感的に構造化できます。
- スムーズな次のアクション: アイデアの評価や投票機能を活用することで、次のステップ(絞り込み、具体化など)へ迅速に移行できます。
これらのメリットは、多忙なPMの方々にとって、限られた時間で質の高いアイデアを生み出し、チームの生産性を向上させる上で非常に有効です。
デスクで実践!デジタルブレストの具体的な進め方
デジタルブレストは、以下のステップで進めることができます。
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目的とテーマの設定:
- 何のためにブレストを行うのか(例:新規プロジェクトの課題特定、既存プロセスの改善策、機能アイデア出し)。
- ブレストのテーマ(例:「顧客満足度を20%向上させる新しい施策」)。
- ブレストのルール(制限時間、一人あたりのアイデア数など)を明確にし、参加者に事前に共有します。
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ツールの選定と準備:
- チームのニーズに合ったデジタルブレストツールを選びます。(具体的なツールは後述します)
- テーマに合わせたテンプレート(もしあれば)を用意します。
- 参加者がツールにアクセスし、操作方法を簡単に理解できるようにサポートします。
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アイデア出し(発散フェーズ):
- 設定された時間内に、参加者それぞれが思いつくアイデアをツール上に投稿します。
- このフェーズでは、アイデアの質よりも量を重視し、他者のアイデアへの批判はしません(ブレストの基本ルール)。
- 各自が付箋形式でアイデアを入力し、ボードに貼り付けていくイメージです。
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アイデアの整理・分類(収束フェーズ前半):
- 出揃ったアイデアを参加者全員で確認します。
- 似ているアイデアをまとめたり、関連性の高いアイデアをグループ化したりします。
- カテゴリーごとにラベリングするなどして、アイデア全体を構造化します。これはオンラインホワイトボードの移動・グループ化機能が役立ちます。
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アイデアの評価・絞り込み(収束フェーズ後半):
- 整理されたアイデアの中から、目的達成に貢献しそうなアイデアを評価します。
- ツールの投票機能を使って、各自が重要だと思うアイデアに投票します。
- 投票結果や議論に基づき、次のステップに進めるアイデアを絞り込みます。
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アクションプランの策定:
- 絞り込まれたアイデアについて、誰が、何を、いつまでに行うかを具体的に決めます。
- これらの情報もツール上に残しておくことで、議事録として機能し、後の振り返りや進捗確認に役立ちます。
この一連のプロセスをデジタルツール上で行うことで、物理的な手間を省き、思考プロセスに集中できます。
発想力を高めるデジタルブレストツール例
デジタルブレストに活用できるツールは多岐にわたりますが、代表的なものとして「オンラインホワイトボードツール」があります。
- Miro: 多機能で柔軟性の高いオンラインホワイトボード。ブレインストーミング用の豊富なテンプレートがあり、多数の付箋を扱うのに適しています。リアルタイム共同編集、コメント、投票、タイマー機能など、ブレストに必要な機能が一通り揃っています。
- Mural: Miroと同様にオンラインホワイトボードの定番ツール。テンプレートやブレストを促進する機能が充実しています。エンタープライズでの利用実績も多く、セキュリティ面を重視する場合にも選択肢となります。
これらのツールは、単にアイデアを書き出すだけでなく、図や線を使ってアイデアの関係性を示したり、既存のドキュメントや画像を貼り付けたりすることも可能です。これにより、より視覚的で理解しやすい形でアイデアを共有・発展させることができます。
ツール選定の際は、利用人数、必要な機能(テンプレート、投票、エクスポート形式など)、他の既存ツールとの連携性、そして価格(無料プランの有無や有料プランの価格帯)を考慮すると良いでしょう。多くのツールには無料トライアルや無料プランがあるため、まずは少人数で試してみることをお勧めします。
まとめ
デジタルブレストは、現代のデスクワーク環境において、個人だけでなくチーム全体の創造性を引き出すための強力な手法です。オンラインホワイトボードツールなどを活用することで、場所や時間の制約を超え、平等かつ効率的なアイデア創出が可能になります。
今回ご紹介したデジタルブレストの進め方やツールを活用し、ぜひ日々の業務に追われる中でも、チームで活発な発想会議を実現してみてください。新しいアイデアが生まれ、業務効率の向上やチームのエンゲージメント強化につながるはずです。